« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

米国の休眠法人を介在させた取引への所得税法の適用

  社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事が所得税法違反(脱税) の容疑で逮捕された新聞報道が紙面を賑わしています。
 逮捕は所得税法違反(脱税)で、所得隠しを米国の3法人を利用して行ったと報道されています。資金環流は、日本の防衛関連企業(日本)  → 米国現地3法人 → 秋山容疑者(日本)と図式されています。容疑者が利用した米国3法人は、 いずれも活動休止の届出を州当局に届けてあるとの報道(読売新聞2008.7.25金曜日朝刊39面)がなされています。
新聞記事によると3法人とは次のものです。
 1.ADD-BACK INTERNATIONAL CORPORATION(カリフォルニア州ロスアンゼルスで設立、 遮音壁の販売会社ですから営利法人でしょう。) 検索すると同社のホームページは事件の影響からでしょうか工事中で閲覧できなくなってキャッシュも消されていましたが、 アーカイブスで見ることはできました。http://web.archive.org/web/*/http://www.addback.co.jp/ 2007年6月の更新が最後でした。
 2.Council for National Security(ワシントンDCで設立)
 この法人は、第168回国会・外交防衛委員会・第17号議事録平成二十年一月八日(火曜日)によると当時の秋山参考人が「Council for National Security 」は米国の非営利団体と説明しています。
 3.Japan American Cultural Society(ワシントンDCで設立)
 この法人は、インターネットで検索すると、この法人はNon-profit Foundation Japan-American Cultural Societyの名義で日本国内に寄附金を出したりしていますが、 寄附金を提供するときはFoundationの名称を使っているので法人なのか基金なのか実態が不明です。

 記事では休業届けをしてあると書いてありましたが、米国には法人の休止、休業、 あるいは休眠届けの制度があるのだろうかと疑問を持ったので、カリフォルニア州法に当たってみました。
 カリフォルニア州の法人の設立根拠法は、CALIFORNIA CORPORATIONS CODEで、 各種法人や非法人組織の規定も整備されています。
 Title 1.CORPORATIONS(会社)
 Title 2.PARTNERSHIPS(組合)
 Title 2.5. LIMITED LIABILITY COMPANIES(有限責任会社)
 TITLE 3.UNINCORPORATED ASSOCIATIONS(法人化されていない組織)
 Title 4~ Title 5 省略
 カリフォルニアの会社設立は州当局(Secretary of State)への法人設立の届出(110条)を行い、 届出から90日以内に受理され効力が発行します。設立の届出から90日以内に定款の内容の一定の情報(STATEMENT OF INFORMATION)について届出が義務付けられています(1502条)。その後、定款記載事項の内容に変更があればその都度、 変更が無い場合でも2年に1回の情報開示のため州当局への届出が義務付けられています。いろいろ検索してみたのですが、 1502条ではその後毎年の届出となっているのですが、解説では2年に1回となっています。 その2年に1回の根拠法には辿りつけませんでした。
 届け出には25ドル(登録費用20ドル+情報公開費用5ドル)を添えることと説明されています。届出義務違反には罰則が適用されます。 インターネットで拾った届出用紙をご参考に末尾に記しておきます。届出の情報に基づき情報公開(有料)がなされています。
 このCALIFORNIA CORPORATIONS CODEには法人の事業活動の休止、休業、 休眠のような届出制度が見あたらないのです。休業状態の会社は2年に1回の届出義務は免除するという規定は無いようです。 新聞記事のいう州当局への休業届けが一体どのような制度の下で何のために行われたのか疑問を解明することはできませんでした。
 税務については日本と同じで、内国歳入法(IRS)は法人の休眠状態に対する規定を設けていません。 事実上事業活動を休止し休眠状態にあったとしても利益の有無に関わらず税金の申告義務は負っています。 新聞報道によると日本の防衛関連企業からの米国3法人へ振り込まれた資金は、3法人にそのまま滞留し、出金は無かったということですから、 3法人は内国歳入法に従い連邦税を申告をしていたことになります。
 想像の域を出ませんが、もしかしたら州税のFranchise taxとの関係があるのかも知れません。 州税までは調べてはいませんが2年に1回の情報公開の届出書にわざわざ「dormant」とか「inactive」 のような記載すればFranchise taxの減免でもあるのでしょうか? ご参考までに敷衍すれば、Franchise taxとは州税で州が定款を公認(chartered)することにより当該法人は州内で事業活動を行うことができる、 その営業活動の権利に対する課税のようなものです。定款のchartered制度の思想は米国がイギリスの植民地時代まで遡り、 英米法判例で有名なDarmouth College事件(1819年)にその淵源を探ることができます。

 外国法人を隠れ蓑にした取引の争点は次のものが想定されます。
1.米国3法人からの秋山直紀容疑者が受けた報酬 
 米国3法人からの報酬は、 役員報酬で米国本店所在地で課税しようにも休業届けがあるので休業法人における法人と役員の間の委任契約に基づく役務提供はあり得ない。 事実上の役務提供の場所は日本国内で、米国3法人とは無関係に秋山直紀容疑者が日本の防衛関連企業に対して個人役務の提供をしたことになる。
2.米国3法人には恒久的施設の存在
 2つの国に所得が跨る場合は事業活動をする恒久的施設の存在で所得の帰属を判定しますが、本件の場合、米国3法人の実態が架空なのか、 どこかに間借りでもしていたのか。この辺は東京地検特捜部は既に現地調査を済ませているのでしょう。仮に恒久的施設が存在していたとして、 新聞報道では休業届けから5程経過していますから、そのような法人の恒久的施設をどのように解釈するのか。法人の設立届出が米国でも、 その米国の恒久的施設が架空や休眠であれば、米国の本店を通じて実態のある日本支店や日本支部の活動の本拠地(恒久的施設) に所得が帰属すると解釈する可能性もあります。
3.実質課税の原則あるいは法人格否認の法理の適用
 休業届けをした米国3法人への資金還流は法人形態を利用した脱税ということで、実質課税の原則(所得税法12条) を適用して秋山直紀容疑者への所得帰属を認定する。
 本件取引全体に法人格否認の法理を適用し、「法人格が法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合」あるいは、休業届けにより 「法人格が全く形骸にすぎない場合」との認定も想定されます。

 なかなか興味の尽きない事件ですが、法人の実態あるいは休業届けが大きな意味を持っているのでしょう。
 初めて見たカリフォルニア(加利福尼亜)州法です、良く理解出来なかったので誤りはご容赦下さい。(た)

カリフォルニア州会社法のアドレス
http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/calawquery?codesection=corp&codebody=&hits=20
届出用紙のアドレス初回用(なお、変更無し用、外国会社用、非営利法人用は別になっています。)
http://www.sos.ca.gov/business/corp/pdf/so/corp_so200c.pdf

| | トラックバック (0)

新新公益法人会計基準と公益認定法との関係

 平成20年(2008年)4月11日付けで新新公益法人会計基準が設定され、平成20年(2008年)12月1日から実施されます。 会計基準は会計基準本体と運用指針の両方から構成されています。
 新新会計基準は公益法人改革3法(公益認定法、一般法、整備法)の施行に合わせての実施です。
 公益法人会計基準は昭和60年(1985年)以来の基準が平成16年(2004年)10月に改正され、その新基準は平成18(2006年) 年4月以降開始する事業年度から速やかに実施するよう主務官庁から指導監督を受けていましたが、 新基準がまだ十分に行き渡っていない状況の中で改革3法の内容との矛盾が早くから議論されていて法律に合わせるべく会計基準の見直しが平成20年 (2008年)4月に行われた次第です。
 新公益法人は2階建ですから一般法で法人格(1階)を得た上で公益認定法に基づき公益認定(2階)を受けます。会計処理については、 一般法が定める最低限度の会計規定に従い、新新会計基準を斟酌しつつ法の定める計算書類を作成する形になっています。 旧民法34条の移行法人についても同じで、整備法が定める最低限度の会計規定に従い、 新新会計基準を斟酌しつつ法の定める計算書類を作成する形になっています。なお、 平成20年12月から最初に開始する事業年度について平成16年10月の新基準も運用指針の附則で認められています。
 公益認定法にも計算規定がありますが、それは審査行政庁の認定審査基準ですから、 毎事業年度の計算書類を作成するための会計規定ではありません。言い方を換えるなら、 認定申請する一般法人や移行法人が新新会計基準を斟酌して作成した各事業年度の計算結果に加減算をして審査基準に合致しているか否かを審査するための計算規定です。 また、貸借対照表の表示規定も資産の内容審査のための規定を意味します。
 なお審査においては、「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」を審査基準とすると共に、「公益法人会計基準」及び 「公益会計基準の運用指針」も適用すると公表(平成20年4月内閣府)されています。 この審査基準は行政手続法第2条ロの審査基準とされていますから、 計算書類が新新基準に合致していることを当然の前提とした上で加減算をすることになります。ただ、 新新公益法人会計基準案をパブリックコメントに付したときの公益認定委員会事務局の回答2では、「新たな公益法人会計基準は、 強制適用ではありません。」と断っています。強制では無いと言いつつ、事実上は新新基準で審査するのですから、 一種の裁量行政のようなものでしょう。
 認定申請を行う場合の計算書類作成から認定申請までの流れは次のようになるのではないでしょうか。
 ①毎決算期は新新基準に従い計算書類を作成する。(一般法123条、整備法60条)
 ②収益事業課税が適用される場合(法人税法4条)は①の計算書類に基づき申告調整をする。
 ③認定申請においては、①の計算書類に申請の加減算調整(認定則13条~18条他)をする。

 別添資料として、公益法人会計基準と公益法人改革3法(一般法、整備法、認定法)の関連を一覧表にしましたので、ご参照下さい。

新新会計基準 と 公益認定法等の関係.pdf - 90.8 KB

収支相償における費用の加減算の調整規定.pdf - 102.0 KB

公益認定法が定める加減算調整規定で分かり難いもの
1.特定資産として表示するものの例示(指針12)
 特定資産として表示するものの例示として特定費用準備資金と資産取得資金が揚げられています。「特定費用準備資金」 については認定法15条の公益目的事業費率の計算との関係において則18条に規定されると同時に遊休財産の上限計算規定(認定則22条) おいて規定される資産です。似たような「資産取得資金」 は認定法16条の遊休財産額の計算との関係において則22条において規定される資産です。 両資金とも引当金処理の対象となっていない資産ですからいわば内部留保の一部です。特定の公益目的(将来のモノ)のために現在の資金(カネ) を管理していることを貸借対照表で表示するということは、その資金は神棚に祀って手を付けていないことを示せというようなものでしょう。
 ①特定費用準備資金は次のように定義されています
 「将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用(事業費又は管理費として計上されることとなるものに限るものとし、 引当金の引当対象となるものを除く。以下この条において同じ。)に係る支出に充てるために保有する資金 (当該資金を運用することを目的として保有する財産を含む。以下同じ。)をいう。」
 会計では、将来の費用として負債性引当金を計上する場合は、○○引当金繰入 / ○○引当金(負債)と処理しますが、 この特定費用準備資金については【引当金の対象となるものを除く】ということですから、費用処理無しで単に資金管理をするから (固定管理資金 / 流動資産)のような仕訳処理で表示移行するのでしょう。
 だけど、引当金処理が禁止されていると読めないので、特定費用準備資金の対象になるものの内、負債性引当金の対象(例えば一般規則24条) に該当することだってあり得ると思いますが、こんなことをしたら利益留保準備金と扱われてしまうのでしょうか。
 ②資産取得資金は認定規則22条③項3号で規定されていますが、③では次のように定義されています。
 「次に掲げるいずれかの財産(引当金に係る支出に充てるために保有する資金を除く。)」
 引当金の会計処理されたものは含まないので上述の特定費用準備資金と同じ扱いということになります。

2.会計基準と加減算調整規定(認定則13条~19条)との関係
 加減算調整規定(認定則13条~19条)の規定振りを読むと、減算調整する規定振りには工夫の跡が見られます。
ただ、臨時的な費用を排除し、定性的な費用で公益実施費用額、収益等実施費用額、管理運営費額を審査しようという趣旨は分かるのですが、 この規定振りには損益計算を直接操作せよと言っているのではないかと勘違いさせてしまうような規定振りです。
費用の加算項目
 商品製品の原価:「事業年度の費用額に算入する。」
 土地資料:「事業年度の費用額に算入することができる。」
 無償役務:「事業年度の費用額に算入することができる。」
 特定費用準備資金:「事業年度の費用額に算入する。」

費用の減算項目
 財産の譲渡損:「事業年度の費用額に算入しない。」
 財産の評価損:「事業年度の費用額に算入しない。」
 財産運用損失:「事業年度の費用額に算入しない。」
 特定費用準備資金:「当該事業年度の費用額から控除する。」

 上記1の①と②は、資金積立の純増額をみなし費用と扱うという意味においては同じですが、 ①の場合は認定規則にみなし費用化の根拠規定があるのに対して、 ②の場合はみなし費用化の根拠規定がないので類似のものなので解釈可能ということなのでしょう。
 誤りはご容赦下さい。(た)

| | トラックバック (0)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »