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オバマ大統領の宣誓のやり直し

 2009.01.22の夕刊にオバマ大統領がホワイトハウスの建物内での宣誓をやり直したとの報道がありました。詳細が判らなかったのでインターネットでアメリカの報道を検索してみました。

 大統領には、職務執行前に合衆国憲法第2編(執行部)第8項に従い宣誓を読み上げることが義務付けられています。
 Before he enter on the Execution of his Office, he shall take the following Oath or Affirmation: - " I do solemnly swear (or affirm) that I will faithfully execute the Office of President of the United States, and will to the best of my ability, preserve, protect and defend the Constitution of the United States."

 大統領は、その職務の遂行を開始する前に、次のような宣誓または確約をしなければならない。ー 「私は、合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽くして合衆国憲法を維持し、保護し、擁護することを厳粛に誓います(または確約します)」

 やり方は、括弧内の引用文を合衆国長官が読み上げ大統領が復唱する形をとるのですが、今回は合衆国最高裁長官ロバーツが憲法の引用文の中の「忠実(faithfully)」という言葉を読み落とした(misplace)ので、オバマ大統領がそのことに気づき復唱を躊躇して中断したためだそうです。
 それでも有効ではあると判断したそうですが、慎重を期して"out of an abundance of caution."再度やり直しをしたのだそうです。

 米国の報道記事には、ロバーツ長官のへま(flub)とか失敗(screw up)とか書いてありました。その裏にはロバーツ長官が共和党ブッシュ大統領に選任された最高裁判事で、若くして最高裁長官に就任(2005年就任時は50歳だから2009年の現在は54歳)するくらいの大変な秀才なのに、こんな単純な読み間違いをするのは、民主党オバマ大統領就任に味噌をつけたのではと勘ぐるものがあったからでしょう。
 それにしても、憲法に書かれている引用文を一字一句間違いなく宣誓することには重みがあるということに気づかされました。(た)

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オバマ大統領就任演説を読んで

 アメリカ合衆国第44代大統領・オバマの大統領就任演説(2009.01.20)の邦訳が朝刊各紙に掲載されていますが、演説の翌日には全文邦訳掲載は限られた時間の中ですから苦労したのだろうと思います。テレビ中継を聞いている最中は意味が分からなかったことも活字になると気になる点が出てきます。

1.the still waters of peace
 冒頭で前大統領ブッシュ氏への謝辞を述べた後に、過去の大統領達はそれぞれの時代背景の中で就任演説を行ってきており、晴れの時代の中での就任演説もあれば嵐も時代の中での就任演説もあったと述べています。晴れの時代に行われた箇所の原文は「 The words have been spoken during rising tides of prosperity and the still waters of peace. 」ですが、自分は「the still waters of peace」が理解できず、waterが複数形というのも理解できませんでした。
 各紙の邦訳を比べてみましたが、各紙とも「平和な時代」の趣旨で意訳しているようです。

 読売新聞訳:宣誓は、繁栄の高まりのときや、平和で静かなときに行われたこともあった。
 朝日新聞訳:宣誓は、繁栄の高まりや平和な時にも行われてきた。
  日経新聞訳:宣誓は繁栄の高まりのなかで行われることもあれば、穏やかな平和のなかで発せられることもある。
  毎日新聞訳:その言葉は、繁栄の波と平和の安定の時期に語られることもあった

 何だかピントこないので「still waters」をインターネットで検索してみると旧約聖書の中の詩編23編(PSALM 23)にそれらしきものがありました。

 He makes me lie down in green pastures;
 he leads me beside still waters;
  he restores my soul.

 主はわたしを青草の原に休ませ
 憩いの水のほとりに伴い
 魂を生き返らせてくださる。

 この詩編23は詩編の中でも最も有名で、賛美歌の中で歌われている詩だそうです。still watersは、第1節の冒頭で出てくる有名な箇所だからこそ、心安らぐ平和な時代を表象する言葉として選ばれたのだろうなと思いました。このような言葉は聖書に馴染んでいないと理解できそうにもありません。

2.We remain a young nation.
 第3段落でアメリカ再生を訴える前に第2段落で米国がまだ若い国だと認識します。
 読売新聞訳:我々はまだ若い国だが、聖書の言葉にあるように、子供じみたことをやめる時が来た。
 朝日新聞訳:米国はなお若い国だ。しかし、聖書の言葉を借りれば、子供じみたことはやめる時が来た。
 日経新聞訳:我々は若い国家であり続けるが、子供じみたことはもうやめるべきだ。
  毎日新聞訳:我々はいまだ若い国家だ。だが、聖書の言葉を借りれば「幼子らしいこと」をやめる時が来た。

 へェ~と思いましたね。米国大統領から諧謔に富む言葉を聞くとは思いもしませんでした。
独立宣言1776年あるいは憲法制定1787年から数えて230年余だから若いというのでしょうか。

 国が若いと言われると小生のような人間は日本の敗戦後の占領時代のマッカーサーの日本人幼稚論を連想してしまいます。1945年日本は太平洋戦争に負けてアメリカに占領統治されました。
 占領統治は連合軍最高司令官マッカーサーの指揮の下に行われました。彼は1951年にトルーマン大統領に解任されるまで日本に君臨し、帰国直後の米上院軍事外交委員会(1951年5月5日)において同じ敗戦国の独逸と日本を比較して、日本人はまだ生徒の時代で12歳の少年であると、日本人を蔑視した証言をしていました。欧米人は大人だと言うのです。
 星霜移り百年に一度の金融津波に襲われた途端に、米国新大統領は米国はまだ若い国だと言うのですから時代・状況が変わったものです。

 ただ、日本の敗戦の時代にも米国人の中には米国の奢りを諫める人もいました。
 随分前にこのブログでご紹介した日本の戦争責任を追及する山下裁判(フィリピン・マニラ軍事法廷)に山下奉文の弁護人として選任されたアメリカ人のフランク・リール(A.Frank Reel 当時37歳)もその一人です。彼はフィリピンでの裁判終結後に米国に帰国し、裁判記録「The Case of General Yamashita, 1949, University of Chicago Press」を出版していますが、その総括の36章に次のような記述をしています。
 「合衆国は最早若い国ではない。それは、成熟した、大人になった国民は、その間違いを認めることができる。
 たとえ、我々が建国の父祖達によって築かれた公正の基準から逸脱したとしても、たとえ、我々がアブラハム・リンカーンによって表現された寛容の思想から逸脱したとしても、我々は人間性に対する信頼及び我々自身の自尊心を恢復するための未来の道標を発見するために、少なくとも、事実を認めて分析することができる。」

 このF・リー弁護士の総括は戦争裁判に対する裁判規範を論ずる中での議論ですから、新大統領就任演説とを比較することは無理があるのは承知ですが、ただ国が目指す方向の考えにおいては比較可能と思います。

 2009年のB・オバマ大統領(47歳)は、米国は、若いけれども、子供じみたことを止めて不朽の精神を再認識しようと主張します。その前段では、米国は困難に直面する毎に「祖先の理想に忠実であり、建国の文書に誠実であり続けることで、乗り切ってきた」と建国の精神を拠り所とし、建国精神への回帰を主張しています。
 

 1949年のF・リー弁護士(当時41歳)は、米国は成熟した大人だと認めた上で、大人だからこそ間違いを認め、人間性に対する信頼や自尊心の恢復をしようと主張します。
 F・リーは、建国の父が気づいた公正基準やリーンカーンの思想から逸脱してもあるべき人間性を恢復するため未来の道標を捜すべきと呼びかけます。

 小生は、人間性に座標を置くF・リーの思想に軍配を上げます。
ことろで、子供じみたことを止めるべき(to set aside childish things)時が来たとはどういう意味でしょうか。まさか、今までやってきたことは子供の戦争ごっこだった、子供じみたことをやって世界を混乱に陥れてしまったと言われたのではえらい迷惑な話です。(た)

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【書籍】月刊スポーツメディスン1月号35頁

月刊スポーツメディスン(発行:ブックハウス・エイチディ) 誌上で連載されている「Sports & Law 基礎から学ぶ『スポーツと法』 」の第2回を執筆しています。 一昨年から昨年にかけて、スポーツ界で、大きな話題になった問題です (*1) (*2)

境田正樹「ドーピング誤審事件の残した課題」 "http://www.bookhousehd.com/msm/booksq107.html">月刊スポーツメディスン2009年1月号
(通巻107号)35頁

 (*1) CAS 2008/A/1452 Kazuki Ganaha v/ Japan Professional Football League ARBITRAL AWARD

 (*2) Arbitration CAS 2008/A/1452 Kazuki Ganaha v/ Japan Professional Football League, award of 26 May 2008

 (さ)

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