公益性とは

 現在、「公益法人制度改革に関する有識者会議」 報告書(平成16.11.19)が指摘した公益法人に係る諸問題を解決するために、「非営利法人制度の創設に関する試案」 に基づき新たな非営利法人に関する法案の制定作業が進められています。
 この有識者会議は「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針(平成15年6月閣議決定)」 に基づき行政改革担当大臣の下で開催された言わば私的諮問会議で内閣府・本府内閣官房・ 行政改革推進事務局の中の公益法人制度改革推進室が事務局を司っていました。

1.改革法案の目指す方向
 報告書の議論は、現行民法の公益法人は各主務官庁の許可制であるため、 それを抜本的に見直し法人格取得と公益性の判断を分離することを目指すことです。
 ①法人格取得については、株式会社と同様に一定の要式が整えば登記により法人格を取得する準則主義で非営利法人制度を創設すること。
 ②公益性については、一定の要件を満たすものを公益性非営利法人として扱う。
 法案整備は行政改革推進事務局が審査中で今秋には出揃い、平成18年春には次期通常国会に上程される予定となっています。 

2.現行の法人類型
 現行の法人の類型は次のようになります。古くからの批判は公益と営利の狭間に位置する法人制度が無いということで、 やっと非営利法人に関する法律が制定されたいう経緯があります。 社団における営利目的とは対外活動から得た剰余を構成員に分配することですが、非営利法人はかかる営利も公益も目的としていません。

 公益法人(民法 明治34年施行)
 特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法 平成10年施行)
 非営利法人(中間法人法 平成14年施行)
 営利法人(商法の株式会社等 明治44年施行)

3.公益性 
 公益法人は民法34条により許可主義で設立されますが公益性の定義は規定されてなく解釈に委ねられています。 有識者会議の報告書は主務官庁の設立許可における公益性審査の裁量権を問題視しています。 許可主義から準則主義に移行すると各省の権限は公益性(上述1②)の認定権限だけになりますが、 内閣府の原案は公益性の認定権限を総務省だけに集中させることですから行方がどうなるか見物です。

 法人類型と公益性の関係を絵にすると次のようになります。
 ┏━━━━┳━━━━━━━━━━━━┓
 ┃営利  ┃   非営利      ┃
 ┃    ┃    ┏━━━━━┓ ┃
 ┃    ┃    ┃公益性  ┃ ┃
 ┃    ┃    ┃     ┃ ┃
 ┃株式会社┃中間法人┃公益法人 ┃ ┃
 ┃    ┃    ┗━━━━━┛ ┃
 ┗━━━━┻━━━━━━━━━━━━┛

4.公益法人税制
 以上の公益法人改革と連動して政府税制調査会・基礎問題小委員会・非営利法人課税ワーキング・ グループにおいて平成17年6月17日に基本的考え方を纏め公表しました。「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」 。中心は公益法人課税ですが、目指している方向が非営利法人制度の創設への対応であるため、 非営利法人を総て取り込むような再構築の方向になっています。

 そもそも現行法人税法の公益法人課税は原則非課税で、限定列挙33業種(法人税法施行令5条) に限りその実態は普通の会社と変わりがないとして一般の株式会社並の課税(税率には差がある。)がなされています。 政府税調の検討はこの33業種を撤廃する流れで、 原則は総て課税で例外的に公益性の高いものについてのみ非課税扱いとする方向に議論を導いています。 これは上述1②の公益性非営利法人と連動しています。

 公益とは何ぞやの議論が絡んで、今後は公益判定が重要な基準になってきます。 新たな法人類型が創設されても実際の事業活動は設立目的とは無関係に境界がはっきりしない面があります。 公益性の議論をすると宗教法人法の問題にも絡み、与党連立政権内部の利害とも絡むのですんなりとはいかない問題です。

(た)

 

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将来の消費税改正への布陣

 朝日新聞(2005.7.10)の7面経済欄に財務省・主税局内部の所管替えが7月13日付けで行われるとの小さな記事がありました。
 現行の事務分掌は平成13年度に行われたもので、 その時の改正理由は企業組織再編税制その後の連結納税制度に対応するものと発表されていました。所得税・ 法人税を抱える当時の税制第一課の事務量の増大が予想されたため局内のバランスをとることでした。事実、 当時は大変な量の法律改正が行われたから対応準備の判断は正しかったのだと思います。その時から既に証券税制が射程に入っていましたので、 それがそのまま来る金融所得課税一体化への体制となるので今回は税制第Ⅰ課は改編なしです。

 今回の一番の眼目は税制第二課で小泉政権後の消費税の大改正への準備に入る布陣と見るべきです。 昭和の時代からの主税局各課の事務所掌の流れを歴史的に追いかけると次のようになりますが、税制第二課の体制は売上税、 消費税を準備した頃の体制に戻ったことになります。
 次に消費税が改正されるときは、税率アップが品目毎の複数税率や非課税品目の洗い直しと絡めて、 課税仕入の証拠書類としてのインボイス発行問題、課税売上割合95%問題等が議論の中心でしょう。


税制第一課の所掌
      (所得税、法人税)
         ↓
 平成13年(所得税、資産税)
         ↓
 平成17年(所得税、資産税)


税制第二課の所掌
      (消費税、間接税)当時消費税立案
         ↓
 平成13年(法人税、消費税)
         ↓
 平成17年(消費税、間接税)


税制第三課の所掌
      (資産税、地方税、通則法)
         ↓
 平成13年(間接税、地方税、通則法)
         ↓
 平成17年(法人税、地方税、通則法)


 現行の主税局の事務分掌をご参考にあげておきます。
各課の事務所掌は財務省設置法を受けて財務省組織令で定められています。


第三十三条(税制第一課の所掌事務)
 税制第一課は、直接国税に関する制度の企画及び立案に関する事務(他課の所掌に属するものを除く。)をつかさどる。


第三十四条(税制第二課の所掌事務)
 税制第二課は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 法人税に関する制度の企画及び立案に関すること(法人税法(昭和四十年法律第三十四号) 第三十七条第四項第二号の規定による指定に関すること、法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号) 第七十七条第二項及び第七十七条の二第四項の規定による協議に関すること並びに税制第三課及び国際租税課の所掌に属するものを除く。)。

 二 消費税に関する制度の企画及び立案に関すること(税制第三課の所掌に属するものを除く。)。


第三十五条(税制第三課の所掌事務)
 税制第三課は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 間接国税(消費税を除く。)に関する制度の企画及び立案に関すること。
 二 国税通則及び内国税の徴収一般に関する制度の企画及び立案に関すること。
 三 内国税に関する犯則の取締りに関する制度の企画及び立案に関すること。
 四 税理士に関する制度の企画及び立案に関すること。
 五 酒税の保全に関する制度の企画及び立案に関すること。
 六 地方税、地方交付税及び地方譲与税の制度に関すること。
 七 地方公共団体の歳入の調査を行うこと(地方債に関するものを除く。)。

                                            (た)

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組合課税の行く末

 政府税調の「個人所得課税の論点整理」(平成17年6月21日)の中に将来の組合課税に関する記述があるので、 それをご紹介いたします。

【問題の背景】
 名古屋航空機リース事件(平成16年10月28日判決・名古屋地方裁判所 平成15年(行ウ)第26ないし第31号)では、 民法上の組合契約が認められ航空機リース事業による収益が不動産所得に区分されると判示され、国側敗訴となりました。
 その判決を受けて平成16年暮れに始まった平成17年度税制改正の検討においては、 既存の民法組合および当時立法が予定されていた有限責任事業組合契約法(平成18年4月27日成立、法律40号) の組合事業に係る課税措置が講じられました。

 しかしながら、平成17年度税制における措置では組合課税の根本問題の解決にはならないため、 将来は現行所得税法の所得区分を組み替え新たな課税区分で対応しないと対処しきれないと言われていました。そこで今回の「論点」 に組合課税への対処が含まれた次第です。


【論点の中の組合課税関連箇所の抜粋】
 2.所得の種類と税負担のあり方
 (1)所得区分
   ③事業所得
    ロ) また、事業所得をはじめとし、 組合形態を用いるなど多様な事業形態によって所得を稼得する場合が見られるようになってきている。こうしたものに対しては、 事業形態の性格や他の事業形態とのバランスを踏まえつつ、適切な課税が確保されるような対応を更に検討していく必要がある。 (4頁)

   ⑤不動産所得
    ~(中略)~ 独立の所得区分としての不動産所得を廃止することを検討すべきである。 (最後の行、5頁)

   ⑦雑所得
    ハ) 資産運用関連の雑所得について見れば、外貨預金の為替差益は総合課税、 先物取引にかかる所得や割引債の償還差益などは分離課税とされるなどその課税方式は区々となっている。しかしながら、 これらを総体として見れば性格的に金融所得に類似しており、課税方式の均衡性を考慮すれば、 分離課税に一本化する方向で検討を行うべきである。 (6頁)

【論点の読み方】
 事業所得の冒頭の出だしは「事業とは、自己の危険と計算において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動のことであり、 そこから生じる所得が事業所得である。」となっています。そもそも所得税法には昔から事業の数種類の列記があるだけで、 事業所得とは何ぞやの定義はなく、所得税法第27条(事業所得)は「事業所得の金額は、 その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。」と計算方法を設けているだけです。

 「論点」が引用した「自己の危険と計算 ~ 」は、過去の裁判例に散見される解釈です。 これは単に出資をするだけで業務執行を人任せにし自らは事業に全く拘わらず、 組合事業の損益に関わりなく一定の配当だけを確保するような組合事業を牽制しています。
 
 「事業形態の性格や他の事業形態とのバランスを踏まえつつ」対処するのですから、 法形式で組合の体裁を整えていても実質から組合事業のあり方を規制していく方向にあると読むのだと思います。 組合事業が否定されたら導管課税は無しですから、法人課税に向かう可能性もあります。

 組合事業の損益の原則は導管課税ですから損益は組合員に直接帰属しますが、例えば組合が不動産貸付事業をしていても、独立した 「不動産所得」が廃止されれば帰属先は新たに用意される座敷ということになります。あるいは、通される座敷は「一時所得」や「雑所得」 も同じように整理されるので、資産の運用先が総括的に網羅された座敷ということも考えられます。

 現行所得税法の基礎は昭和38年12月の政府税調の「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」にあります。 その中に組合課税についての記述(第2課税所得の範囲及び計算に関する問題 3所得の帰属及び課税単位)があります。 「法人形態に至らない多数人の共同による事業所得の帰属について、現行の取扱いは、組合契約又は匿名組合契約による場合は、 利益又は損失の分配の割合の定め等にしたがって各組合員に帰属したものとして、~中略~、 これはその私法上の形式及び実体の差異に妥当な取扱いであると考える。」となっています。 この整備答申は私法形式を整えているものは尊重しています。
 組合課税への方法は二通りです。現行民法等の私法形式を整えているものを否定して組合と認めず課税をするか、 昭和38年整備答申が言っているように私法形式は尊重するが新たに設ける所得区分に導くかのいずれかです。 冒頭の名古屋航空機リース事件における国税当局の方法は前者で私法形式を否定する主張でしたが、 それが認められず地裁では敗訴だったから高裁で負けても次に手が打てるように後者の方法の準備を進めていると読めます。

 なお、論点にはこの他にも行間に隠された判決が滲みでています。 給与所得の箇所では雇用関係の有無だけで一律に論じることの難しさは外国の親会社からのストックオプション判決であり、 配偶者との関係箇所では夫婦は相互扶助の関係を確認していますが、 これは生計を一にする夫婦間の必要経費のやりとりの所得税法56条の判決を背景にした物言いです。

(た)

 

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税務訴訟における立証責任

政府税調は「個人所得税に関する論点整理」 (2005.6.21)を公表しました。
内容の概要説明は2005.6.22朝刊各紙(NIKKEI NET)に掲載されています。

 この報告書の公表に先立ち政府税調会長・石弘光が審議の取り纏めの内容を記者会見(2005.6.11朝刊各紙) で発表していましたが、その内容はサラリーマンを中心とした所得税の課税強化の話が中心でしたが、発表された「論点整理」 はいつものように主要国との比較をして日本の課税最低限が低いとの論点でしたが、 事業所得と不動産所得については現行制度に至った経緯の箇所では戦後のシャウプ勧告を振り返ったりして戦後60年の歪みを問題視していました。 その中で手続規定が含まれていましたので意外な感じがしました。報告書の最後のほうの16頁の「立証責任」です。その箇所を引用します。

 税務「訴訟における立証責任は、基本的には個々の実体法規の解釈として定められるものであり、 わが国の税務訴訟における立証責任は一般的に課税庁が負うものとされている。しかし、近年の税務訴訟においては、 納税者に立証を求めるべき場面においては、納税者に一定の立証を求める裁判例が判例として定着しつつある。
 こうした流れや経済社会の構造変化を踏まえれば、今後、納税者自ら説明責任を果たすことが相応しいと思われる項目について、 個別的に制度的枠組みを整えていくことが望ましい。例えば、前述の、事業所得の必要経費に係る「概算控除制度」の導入や、 給与所得に係る特定支出控除の範囲の拡大は、こうした観点から意義のあるものと考えられる。
 いずれにせよ、税務当局が一般的に立証責任を負う下では、適正・ 公平な課税を実現するために十分な資料を収集できるような環境が整備される必要がある。」

 戦後の税金訴訟の制度はシャウプ勧告まで遡ります。現在では税金の紛争は税務署長への異議申立に始まり国税不服審判所の審判 (不服前置主義)を経た上で裁判所へと提訴され、最終的には司法の場で解決が図られます。戦後の日本では行政裁判所 (明治憲法61条の行政裁判所は一審かつ終審)が廃止されたため、行政事件は直に裁判所の民事部での争いになりました。シャウプ勧告 (1949年)は税金の紛争は先ず行政機関の中で解決を図り、それでも駄目なら司法の場へ移すことを提言しました。
 勧告を受けて税金の紛争を処理する機関として国税庁の設置と同時にその中に協議団(a conference group)が設置 (1950年)されました。それが改組されたものが今の国税不服審判所(1970年)です。 同時に勧告は東京高等裁判所の中に租税事件専属管轄権を有する部署の創設および法務府(省)に租税検察官の提言をしましたが、 こちらの方はうまくいかず、今でも東京や大阪の大都市の地裁で特定の民事部が行政事件を専ら扱っているに過ぎず、 地方では行政事件専門の民事部はありません。

 シャウプ勧告は税金裁判における納税者の立証について提言しています。これはアメリカの例に倣ったものですが、 この提言における原告(納税者)が先ず進んで証拠を出すべきことが立証責任(burden of proof)あるいは提証責任(duty of producing(going forward with) evidence)まで含んでいるか否かは不明です。
「 the taxpayer should have the initial responsibility of coming forward with evidence to show that the Government's administrative decision is erroneous.」
 この勧告は、提訴する者が立証責任を負うとするコモンロンローの裁判手続の原則に従ったものです。 この原則は行政処分に対する不服申し立てにも適用され、先ず不服申し立てをする原告納税者が行政処分の違法性を立証することになります。 この原則は内国歳入法にも規定されています(Internal Revenue Code ,Rule 142及び229)。 1998年のThe IRS Restructuring and Reform Act of 1998 (RRA '98)では、 事実関係について原告納税者が法令に従った信頼しうる事実関係の立証をした場合は内国歳入庁(IRS) に立証責任が再配分されるという条件付きの例外規定が導入され変化はあらわれていますが、原則は生きています。

 シャウプ勧告(1949年)を受けた当時の日本政府部内の検討は次のようなものでした。
 GHQ:税金返還訴訟の立証責任は原告に在るように立法すべきと要請した。
 法務府:原告に立証責任を負わせることを明文化することは行き過ぎである。
 最高裁:税金訴訟においても普通の民事事件と同じで租税債務(国が債権者で納税者が債務者)の不存在の確認を求める訴訟においては、 債権を主張する者(国)が租税債権の主張を立証するのが当然であると解釈していた。債権者である「国の主張が相当」 であれば債務者である納税者に証拠提出義務を負わしても良いが、国の主張が相当なことが証拠により認められる場合でなければ、 債務者に証拠提出の義務を負わすべきではない。結局、賦課処分(行政処分) について納税者に立証責任を配分するのは酷ではないかとの判断から日本の制度には馴染まないとの結論に至り、 1950年に実体税法である所得税法および法人税法に立証責任については規定せず、証拠提出の順番を規定することで妥協が図られました。 (国税通則法制定前は手続規定は各実定税法に規定されていた。)

 当時の行政事件の訴訟手続は民事訴訟法の特別法である行政事件訴訟特例法(GHQの要請を受け1948年の立法で訴願前置主義)に依っていました。 その後、訴願前置主義を廃止した行政事件訴訟法が1962年に制定(新法制定で行政事件訴訟特例法は廃止、 2005年の改正法は実質40年振りの改正法)され、同じ年に行政不服審査法が併せ制定されました。
 国税全般に関する国税通則法が同じく1962年に制定され、国税通則法は税金の異議申立・不服審判・訴訟に係る諸規定を設け、 訴訟については行政事件訴訟法の特別法の位置付けにあり現在に至っています。

 行政事件訴訟法には立証責任の明文規定が無いため解釈から立証責任を求めることになりますが、民事訴訟法は行政訴訟の本質・ 特殊性に反しない限りにおいて適用があるため、 行政事件も実体法的にみて民事紛争と異ならない問題は訴訟法上も民事紛争として取り扱えば良いと解釈されています。 この解釈は1962年の法制定時から一環した解釈です。
 今回の政府税調の「個人所得税に関する論点整理」において出された問題は、所得税の「概算控除制度」の導入や、給与所得に係る 「特定支出控除の範囲の拡大」と関連づけて指摘された形になっていますが、 立証責任の問題の影響は所得税だけに止まらず税法全体に影響を与える大きな問題です。行政事件における主張・ 立証の問題はの改正行政事件訴訟法(2005年4月1日施行)の検討過程(司法制度改革推進本部・行政訴訟検討会) においても意見がまとまらず今後の検討課題とされた問題です。なお、改正法23条の2(釈明処分の特則) は実際には機能していない法24条の職権証拠調べを運用面で補うことが期待されて導入されたもので立証責任とは直接には無関係な問題です。
 税金の処分に対する裁判は、通常は抗告訴訟で処分の取消を求めますが、出訴期間徒過で無効確認訴訟をした場合の立証責任は原告・ 納税者にあるとの判決で確定しています。
 昭和34.9.22 最高裁判例 
 処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な誤認があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
 昭和42.4.7 最高裁判例 
 処分の瑕疵が無効原因を構成すると主張するだけでは足りず、 処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な誤謬があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
 これらは、あくまでも無効確認訴訟での問題であって一般的な取消訴訟での問題ではありません。

 今回の論点整理で「わが国の税務訴訟における立証責任は一般的に課税庁が負うものとされている。」 との記述は以上のような歴史的背景および現状を踏まえた上での問題意識です。新たな「概算控除制度」を導入するのはいいが、 実額経費との差額で過去のサラリーマン税金訴訟(大島訴訟) のように不服に対し国の立証責任でいちいち対応していたのでは叶わないというのが本音でしょう。仮に立証責任の配分問題が明確にされれば、 行政が処分の正しさを立証する前に、配分された立証責任を負う原告・納税者が立証不可で費用の事実の存在が証明できない場合の不利益は原告・ 納税者が負担することになります。 将来そのようになると行政処分に対する納税者の立証責任制度は馴染まないとしてシャウプ勧告に反論した当時の日本政府の意見とは逆の方向に向かい、 司法制度改革推進本部・行政訴訟検討会が纏めきれなかった意見を超えて進んでいるといえます。それとも、 現行の行政の立証責任の原則は維持するが少しでも立証責任を納税者に配分し資料収集面を強化するために、 この立証責任問題を持ち出したのでしょうか。
 課税強化と並んで大きな問題ですが、その割には割かれている紙幅も少なく、 政府税調の委員方は本当にこのような所まで理解して踏み込んで議論されたのでしょうか、疑問が残ります。

(た)

 

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「憲法で読むアメリカ史(上下)」阿川尚之著

憲法で読むアメリカ史巻・阿川尚之著(PHP新書)が読売・吉野作造賞を受けたとの記事がありました。

(読売新聞・朝刊 2005.6.10)(MSN-Mainichi INTERACTIVE 学芸

 この本は慶応大学の阿川尚之教授の著書ですが、 この本が扱っているアメリカ憲法裁判の事例はアメリカの憲法の教科書なら殆どが扱っている事例だからことさら目新しいものではありません。 選評には本書がアメリカ憲法が「法制の技術論ではなくて、時代の要請に応じていかに運用されてきたかを描いた」 ことが選ばれた要因とありました。アメリカは先例法の国だから先例が破られるときは時代が大きく動いています。 裁判例を時系列に並べると常にその事件にまつわる時代背景を物語っていることになります。 アメリカ憲法の教科書は連邦最高裁判事の在職年表が巻末資料にのるくらいですから判事の思想も抜きに裁判例を語ることができないので、 本書も判事を大きく扱っています。

一般向けに事件にまつわる話や当時の逸話を盛り込み物語風に書かれているのですが、 当初は雑誌の連載でしたから紙幅制限があったにしても、あと一言つっこんでもらわないと良く分からないなという印象があります。 それと下巻の山下戦犯裁判と戦争権限の項では「問題の多いものであったらしい。」と書かれているのですが、 ご自身で資料を直接調べて読まれても60年前の遠い裁判の論評は伝聞風になってしまうのでしょうか。まさかとは思いますが、 アメリカの参考資料だけを読んで山下戦犯裁判を論評したのではないと思いますが。 アメリカの遙か昔の憲法裁判例の論評は筆が運んでいるのとは対照的であったため、そう勘ぐってしまいました。

本書は専門書ではないのですが、アメリカ憲法専攻の学者がこの本についてどのような書評をするか読んでみたいです。それと下巻・ 巻末の参考文献ですが、15冊中日本語の参考文献は1冊だけです。この本は日本人一般読者向けに書かれた本の筈ですが、 英語の原書に当たれとでも言うのでしょうかね。

 (た)

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所得税の各種控除の抜本的見直し問題について

政府税制調査会が総会(2005年6月10日)で所得税の各種控除の抜本的見直しを提言することを決めたとの報道がありました。(11日読売朝刊一面
 見直しポイントの表の中に給与所得控除が縮小の方向となっています。そこには但し書きがあり、「サラリーマンの経費が適切に反映される仕組みを作り、確定申告の機会を広げる」となっています。これは所得税法57条の2(給与所得者の特定支出の控除の特例)の改正を意味しているものと思います。政府税調の今回出そうとしている提言は、57条の2の必要経費の枠を拡げようとするのか、それとも別な制度を作ろうとするものかは不明です。

サラリーマンの給与所得控除は、他の所得の必要経費に相当するもので、昔から控除額が高いか低いかの議論があり今に始まった話ではありません。かってこの給与所得の法定画一控除方式の是非について争った方がおられました。同志社大学のスペイン語の大島正教授が自分の昭和39年分の所得税を訴訟物として、所得税法における給与所得の課税が他の所得者、特に事業所得者に比較して不当に重課であり憲法14条①項に違反して無効であると訴えました。
争点は3つで、給与所得控除が実額に比べて低すぎる、給与所得は他の所得に比べて捕捉率が高く不利益な扱いを受けている、事業所得は合理的根拠がない各種の措置法の優遇措置を受けているので給与所得者は不公平な税負担をしている。当時の訴訟記録によると、大島教授の主張は給与所得控除135,000円に対して必要経費の実額は昭和39年において、被服費(80%)、クリーニング代、散髪代、通勤費、研究費、学会関係費、学生関係費及び交際費として合計387,900円です。この裁判はご本人が亡くなられた後も遺族が引き継ぎ昭和41年提訴から最高裁まで約20年かかりました。京都地判決 昭49.5.30(棄却)、大阪高判決 昭54.11.7(棄却)、最高大判決 昭60.3.27(棄却)。経費実額が給与所得控除額を著しく超過する場合は違憲であるとの補足意見はあったものの、本件課税は憲法14条①項に違反するものではないとの結論でした。なお、裁判費用はとおして約2千万円だったそうです。

当時は、九・六・四(クロヨン)とか十・五・三(トウゴウサン)とか呼ばれた給与所得者の補足率の高さから不公平が問題になっていた時代でした。農業が重要な産業であり米議員という言葉もあった頃の話で、それらを含めて正面から優遇税制、補足率の格差解消に挑んだのでした。最高裁判決は、不公平税制がある程度解消された頃に出された判決と言っても過言ではありません。その間一体何を調査・審理していたというのでしょうか。
判決後、昭和62年税制改正において給与所得者が実績に基づいた必要経費の申告ができる制度が導入されました。それが、第57条の2(給与所得者の特定支出の控除の特例)です。画一控除より実績控除を求めた大島教授の意図は選択制度として彼の死後に導入されましたが、この制度は非常に使い難く実際にこれを使って申告しているサラリーマンは毎年全国で十数人しかいないと聞いています。
第57条の2(給与所得者の特定支出の控除の特例)では給与所得控除の代わりに次の経費を控除できます。
1.通勤費
2.転任に伴う転居費
3.職務遂行に直接必要な研修費
4.職務遂行に直接必要な資格取得費
5.転任に伴い別居している場合の帰宅旅費

政府税調が給与所得控除が高すぎるということは事務方である財務省主税局の用意した資料に基づいているのでしょうが、本当に高いのであれば昭和39年の大島税金訴訟が挑戦した画一控除と実額控除の弊害問題は解消したどころか、逆にサラリーマンは優遇されていることになります。税収確保のために画一的控除を下げるというのであれば政策目的として理解できるのですが、実額として高すぎると言われたらどんな基礎資料でどんな母集団にもとづいた計算をしているのか、それに大島教授が解消を求めた各種租税特別措置法の優遇措置を含めて計算をするとどうなるのか知りたくなります。
ところで、この記事を書いていて気が付いたのですが、かってサラリーマン税金訴訟と名付けられた訴訟が他にもありました、サラリーマン総評税金訴訟(昭和46年分所得)、サラリーマン・マイカー税金訴訟(昭和51年分所得)ですが、この手の問題提起は日本が成長期にあり元気だった時代に起こされているのです。サラリーマンが義憤を感じて行政訴訟を起こすだけの馬力がある時代の方が良いと思いました。

(た)


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【LLP関連】有限責任事業組合契約法ミニ逐条解説

 有限責任事業組合契約に関する法律(法律40号平成17年4月27日成立5月6日公布、施行日未定)の主要条文について、民法組合や人的会社である合名・合資会社の解釈を参考にしつつ予想される問題を羅列してみました。人的会社の条文は現在国会で審議中の会社法案も参考にしました。
 その内、本法の所管官庁である経済産業省から政省令およびQ&Aが発表されると全貌があきらかになると思いますが、それまでの繋ぎとしてご参照ください。
 毎度のお断りですが、誤解や誤りはご容赦下さい。

 有限責任事業組合契約法ミニ逐条解説 (2005.6.26.改訂)

 課税問題については「平成17年度税制改正における民法等の組合および有限責任事業組合の課税問題」を併せてご覧下さい。

(た)

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【LLP関連】平成17年度税制改正における民法等の組合および有限責任事業組合の課税問題

 平成17年度の税制改正関連法が3月30日に可決・成立しました。関連する政省令も平成17年3月31日付け官報(号外特第12号)で公表されています。その後、法人税法の省令が平成17年4月13日に改正され関連する別表様式等が整備されました。

 組合課税に関する部分は租税特別措置法および同政省令で規定されています。その中には平成17年4月27日に国会で成立した新たな組合類型である「有限責任事業組合契約に関する法律(日本版LLP法)」(経済産業省)に関する規定も事前に織り込まれた形での条文となっています。

 有限責任事業組合契約法は、早ければ今年の夏には施行が予定されており、近い内経済産業省から契約モデルと運用に係るQ&Aが公表される予定と聞いております。
 改正税法に関する財務省の立法担当者の解説記事は近々専門誌に出ると思いますが、現段階での自分なりに理解した内容を纏めてみました。

 東京フィールド法律事務所内のこちらのページに掲載しておりますので、ご参考にしてください。

 お断りですが、内容は現段階での資料に基づくもので、不十分さや説明の誤りはご容赦下さい。

内容 
1.改正の全体概要
2.有限責任事業組合契約の損失制限の概要
3.個人の民法組合員の不動産所得に係る損益通算の制限の概要
4.法人の民法組合員の不動産所得に係る損益通算の制限の概要
5.有限責任事業組合契約および民法組合契約の損益分配に係る規定
6.有限責任事業組合の個人組合員課税に関する個別規定
7.有限責任事業組合の法人組合員課税に関する個別規定
8.民法組合の個人組合員課税に関する個別規定
9.民法組合の法人組合員課税に関する個別規定
10.外国事業体への課税

参考資料(PDF)
平成17年度税制 事業体毎の課税規制比較表
平成17年 組合課税に係る租税特別措置法令の条文一覧
事業体の要素比較表
有限責任事業組合契約に関する法律とアメリカ各州の一般的なLLPとの対比表
日米の事業体課税の比較表
所得税 有限責任事業組合に係る組合員所得に関する計算書 別表第七(二)
法人税 別表9(3)組合事業に係る組合損失等の損金不算入

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贈与・相続により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の取得費に係る更正の請求について

 平成17年2月1日、贈与で取得したゴルフ会員権を譲渡した時に、贈与による名義書換費用が譲渡所得の計算において必要経費となるか否かの争いがあり、必要経費と認める旨の判決がありました(最判(第三小法廷)平成17年2月1日 平成13年(行ヒ)第276号所得税更正処分取消請求事件)。

 この判決を受けて、平成17年2月14日、国税庁は、取得費に関する新たな処理方針を公表しました。
贈与・相続により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の取得費について

 これから確定申告をする人は、この方針を受けて申告をすれば良いのですが、過去において申告した人も更正の請求ができることも処理方針で説明されています。

 ただし、過去に申告した人の場合は減額更正処分の「除斥期間」との関係があるから注意を要します。その関係を一覧表に纏めましたのでご参考にしてください。

(追補)
 なお、更正の請求等の具体的方法が、日本税理士連合会のホームページに2005年2月17日付けで掲載されましたので、ご参考にして下さい。
 

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【LLP関連】有限責任事業組合契約に関する法律案(閣議決定)

有限責任事業組合契約に関する法律案が、平成17年2月4日(金)に閣議決定されました。

法案は経済産業省のサイトにて掲載されています。

ついては、「有限責任事業組合契約」と既存の事業体の要素を比較した表を作成し、こちらにアップしました。理解の一助としてご利用下さい。
毎度のお断りですが、誤りはご容赦下さい。

(た)

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平成17年度税制改正の要綱(閣議決定)

平成17年1月17日、「平成17年度税制改正の要綱」が閣議決定されました。首相官邸サイトの「閣議案件」に記載があります。
要綱は財務省サイトにて公開されています。

今回閣議決定された「要綱」と財務省の「平成17年度税制改正の大綱」(平成16年12月19日付け)を比較してみましたが、内容に変更された箇所はありませんでした。

今後の段取りは、平成17年1月21日に開会される通常国会(第162回)に所得税法他の改正法案が上程され、年度内可決で施行は4月1日以降ですが、納税者にとって不利でないものは平成17年1月1からの施行が予定です。

本年の税制改正は大きな改正がありませんが、法務省の「会社法制の現代化に関する法案」および経済産業省の「有限責任事業組合の法案(LLP法案)」がいずれも2月に上程予定なので注意を払っておく必要があります。

(た)

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帳簿の保存(消法30条7項)その2

昨年末にこのブログで紹介した消費税の最高裁判決(平16.12.16)に続き、同年12月20日に別の最高裁判例がでていました。
追加してご紹介します。
平成16年12月20日第二小法廷判決 事件番号:平成16年(行ヒ)第37号
要旨:

 消費税額から仕入れに係る消費税額を控除することを定める消費税法の規定は,事業者が税務検査の際に適時に提示し得るように態勢を整えて仕入れに関する帳簿,請求書等を保存していなかった場合には,適用されない

 本判決には少数意見が付されています。
 少数意見は、消費税の仕入税額控除は青色申告のような特典ではないので、調査への協力を前提とした帳簿等の保存と解釈することの疑問を呈しています。

(た)

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【LLP関連】日本版LLP関連法案、次期通常国会に提出

平成17年1月4日付け日経新聞にて、日本版LLP関連法案が、次期通常国会に提出されるという報道がなされました。
この報道内容は、日経のサイトをご覧下さい。

なお、日本版LLPについては、TFL-Blogでも過去に取り上げております。また、東京フィールド法律事務所のサイトでも取り上げております。下記をご覧下さい。
1.「有限責任事業組合制度の創設の提案」の公表と、これに関する感想
2.LLC・LLP理解のための参考資料
3.平成17年度税制改正大綱における民法組合関係の税制についての感想

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帳簿等の保存(消法30条7項)

 消費税の仕入税額控除の要件となっている帳簿等の保存(消法30条7項)についての最高裁判決が初めて出ました。(平成16年12月16日第一小法廷判決 事件番号:平成13年(行ヒ)第116号 課税処分取消請求事件

 この判決について、私なりにコメントを書いてみました。
 本家サイトの「消費税法に係る裁決・判例一覧」の仕入税額控除の項(4) 法30条7項【帳簿の保存】 フにPDFで掲載しております。

(た)

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新司法試験と「租税法」の試験問題(3)

~新司法試験サンプル問題に関する続きです。

(3)サンプル問題第2問は法人税を絡ませた問題です。
 所得とは経済上の概念であるため、所得の源泉の合法・違法性は問われることがありません。現実の収入があれば課税対象となります。それが返還請求を受けていようと本人の所得であることには変わりありません。
 所得区分は横領なんてどこにも属さないから消去法で雑所得に収斂していきます。

 必要経費については、法人税法は①収益に直接対応する原価、②その期間の収益に総体的に対応する関係にある営業費、③収益との対応関係はないが資本等取引以外で純資産を減少させる損失からなるものに対して、所得税法は「総収入金額に係る売上原価その他当該収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」です。従って、本件横領に直接必要な経費なんてありえないから必要経費はなし。

 ところで、設問が決定処分の適法性を争う場合ですが、適法性を争うということは行政処分に瑕疵がありその処分の取消あるいは無効確認を求めるということですから、何処に瑕疵があるのかが明確にする必要性があります。「決定」は、納税義務者が申告書を提出しなかったので「調査により」税額の決定を処分するということですから、調査による課税標準に誤りがあったことを指摘する必要があります。
 本件で課税標準の瑕疵を探すとすれば、その後判明した協力金5百万により、着服横領者の所得が1千万ではなく実質所得は残りの5百万であるから、本件処分には違法性があると主張するのでしょう。「その後 ~ 公判の過程で 協力金 ~ が判明」したことになっているから、決定処分には協力金5百万が加味されていなかった設問としか読めません。
 この場合の事実認定において本人がCにやむなく渡したのか積極的に渡したのかが分かれ目になるのではないでしょうか。その場合は、総収入からやむなくならCに協力金として渡した金銭を控除して実質所得5百万の主張をするのでしょうが、どうやって主張を組み立てるのか小生には力不足でできません。
 ところで、5百万は刑事事件の公判過程まで明らかになっていなかったのでしょうか。税務調査の段階で協力金の実態が明らかになっていなかったのでしょうか。調査を受けた納税義務者Aが自分は実際は5百万しか手にしていないと主張しなかったのでしょうか。税務調査段階で主張したけど、それは雑所得の必要経費として認められなかったと言うのであればは、調査方法の瑕疵を争点することもありえます。もっとも、結果は同じでしょうが。

 ちょっと税務訴訟制度の話になりますが、税務訴訟は国税不服審判前置主義です。順を追いますと、本人が無申告のため税務調査があり税務署長の職権で決定処分が行われます。Aはその処分に対する異議申立で減額更正処分を求めるも、税務署長は異議請求を棄却します。それから国税不服審判所への申立をします。不服審判所では審理に当たり職権で独自調査をします。不服審判所での棄却裁決があり、その裁決に不服なため、出訴期間内に地裁への取消訴訟となります。
 設問は国税不服審判の裁決が出た終わった頃の刑事事件の公判の話なら、出訴期間の制限があるから大急ぎで取消を求めて提訴します。出訴期間が徒過した後に刑事事件の公判で5百万の存在が明らかになったので、それを根拠に決定処分の無効確認訴訟ですが、判例からすると重大且つ明白な瑕疵を立証しなければならないからえらい大変な労力ですね。
 「決定処分の適法性」を争う程のAが、取消訴訟に至るまでの長い過程で協力金のことを一切主張しなかったという設定の不思議さ、職権調査が2回も行われたのに協力金が明らかにならなかったというのもなんとも不思議です。国税庁はしっかりした組織だから調査では協力金が判明していたが、それを必要経費として認めなかったと理解することが自然です。 設問に隠れた制度の存在を考えると、浅学非才の小生にはどのように理解したらよいのか判りません。

 横領された法人Bは自己の所得として帰属させるため使用人に対する損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権を行使するから、請求先をAとCに分けるのか否かによって収入(益金)計上時期が異なります。Cは現金主義的な扱いもありえます。同時にCに対して計上していた経費(損金)の一部を過大分計上として否認せざるを得ないのでしょう。

  もし、小生が受験生であれば勝手な論述をするから落第間違いなしです。

(おわり)

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新司法試験と「租税法」の試験問題(2)

~新司法試験サンプル問題に関する続きです。

(2)サンプル問題第1問は所得税法です。
 このサンプル問題は基本と問う一般論の設問になってはいますが、この問題は平成15年・16年に話題をまいたネタを題材にしています。弁護士・税理士の夫婦間あるいは弁護士・弁護士の夫婦間(先般、平成16年11月2日最高裁で原告弁護士が敗訴)の必要経費の問題です。
 この問題の源流は昭和25年に導入され昭和40年に改正された所得税法56条、57条の「生計を一」にした家計単位の中での必要経費、専従者給与のあり方の問題です。
 実体税法以前の問題として「婚姻は ~ 相互の協力により、維持されなければなら(憲法第24条)」ず、また「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない(民法第752条)」前提があります。どちらの財布から出たか不明な場合が多いのも実情ですし、更には夫婦間の雇用契約や委任契約はあり得るのかと言ったそもそもの問題を抱えています。時世時節が変わろうと平成の時代においても「生計一」の立法趣旨は生きているのです。
 行政許可認可における名義人の権利が所得を構成するのかについては、行政許可のもつ法的意味を最初に問う必要がありましょう。許可とは一般的には禁止されている行為を特別に解除する効果をもたらしていますから、その効果は本人に帰属する筈です。例えば酒類販売の所得帰属の判例においても他人が事実上名義借りで酒類販売をしていても、許可を受けた名義人に所得を帰属させています。
 これが民民の私契約なら実質課税の原則の適用で契約当事者以外への所得帰属ということもありますが、本人が全く事業をしていないのならいざ知らず、本件は許可を前提とすべきでしょう。不動産登記には公信力が無く第三者対抗要件に過ぎないので、真実の所有権に基づいた実質課税の原則が働く余地があります。

(3)に続く

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新司法試験と「租税法」の試験問題(1)

 法務省の司法試験委員会が平成16年8月2日に専門的な法律の分野に関する科目を答申しました。答申を受けて新司法試験問題検討会が平成16年12月16日に「平成18年から実施される司法試験(選択科目)における具体的の出題のイメージ(サンプル問題)」を公表しましたが、その中に「租税法」が含まれていますのでちょっと感想を述べます。

(1)サンプル問題の「租税法」の冒頭に

「所得税法を中心とし、~ 法人税法及び国税通則法を含み基本的な理解を問う」
とありますから主題は所得税法で、所得税法と法人税法を対比しつつ、税法全般に係る基本的な問題は国税通則法を通じて論ずるということなのでしょうか。

 現行の税理士試験の科目は国税は手続法の分野で「国税徴収法」、直接税の分野で「所得税法」、「法人税法」、「相続税法」、間接税の分野で「消費税法」、「酒税法」、地方税の分野で「住民税」、「事業税」、「固定資産税」です。各実体税法に共通した税務の基本的な法律関係を規定した「国税通則法」は昭和37年に制定されているのですが、何故か今もって税理士試験科目にはなっていないのです。
 実際問題、国税通則法だけでは設問が作りにくいから実体税法の根底あるいは共通問題として絡ませるしか手が無いのかも知れません。仮に国税通則法だけの単独試験科目になると行政事件訴訟法や民事訴訟法との関係は外せないし、ちょっと目配りをするなら行政手続法や情報公開法まで手を広げなければならないからしんどいです。

 租税法の教科書では総則的には憲法問題、解釈の合理性、租税の債権債務関係、賦課の行政処分関係を扱い、各論では個別実体法を扱うのが一般的なスタイルですが実体税法の方は間口を拡げ浅く流しているだけです。一方租税関係は公法の中でも特殊な分野であるため、行政法の教科書でも必ず扱われているので、租税法の総則分野と行政法で扱う租税関係の範疇が重複しています。

 新司法試験が税法を個別実体税法ではなく「租税法」と銘打ったことの趣旨は何なのでしょうか。国税通則法を入れたから租税法という訳でもないと思うので、解答に当たっては総則的観点と実体税法の個別的観点の両方から所得税法や法人税法を論ぜよということなのか、穿ったものの言い方をするなら税務に弱い法曹関係者が多いからその辺をもっと勉強しておくようにということなのでしょうか。もしそうなら、返す刀で税務の現場にも租税法の原点に立ち返って合理的な解釈で税法判断を願いたいものです。同一論点について判例を並べるとどうしてこんなに解釈に差が出るのだろうと思うことが多々あるからです。

 現行所得税法および法人税法の出発点は昭和40年改正法にあります。その基本思想は昭和38年12月の政府税制調査会「所得税及び法人税法の整備に関する答申」にありますから立法趣旨を押さえるため一回は読んでおくべきでしょう。解答に当たっては所得税と法人税の違いは要点でしょう。所得税の概念で論ずべきところを法人税の概念で論ずると減点が大きいのは税理士試験でも同じですが、租税法というからにはその比重がもっと大きいのかも知れません。切れば血も涙も出て情で行動する自然人を対象とした所得税法と、完全な経済人で全経済活動を前提とした法人税法では前提に差が出ます。
 国税通則法の立法趣旨は国税通則法の制定に関する答申(昭和36年7月)ですが、通則法の教科書は極めて少ないのが難点ですから、租税法あるいは行政法の教科書で補う必要がありましょう。税法は元々縦割りでできています、例えば平成12年7月3日に公表された重加算税の取扱いの事務運営指針は各税目毎に微妙なずれを見ることができますが、通則法の解釈において所得税と法人税法ならそこまでは気を使う必要はないです。

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平成17年度税制改正の大綱

(1)「平成17年度税制改正の大綱」 (平成16年12月19日付け)

  財務省サイトにある税制ホームページ内にて公表されています。

(2)自民党「平成17年度税制改正大綱」 (平成16年12月15日付け)

  自民党サイトの政策トピックスで公表されています。

(3)政府税制調査会の答申

 ○「平成17年度の税制改正に関する答申」 (平成16年11月25日付け)

 ○「答申に盛り込まれていない意見

 上記はいずれも税制調査会のサイトで閲覧できます。

(4)企業に関する税制改正概要

 ○「平成17年度経済産業省関係の税制改正について」 (平成16年12月15日付け)

 経済産業省サイトで閲覧できます。

 ○「平成17年度中小企業関係税制の概要」 (平成16年12月16日付け)

 中小企業庁サイトで閲覧できます。

(5)土地・建物に関する税制改正概要

 平成17年度税制改正について税制改正主要項目結果概要 (平成16年12月15日付け)が、国土交通省サイト内の 「予算・決算・ 税制改正概要」で閲覧できます。

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【LLP関連】「有限責任事業組合制度の創設の提案」の公表

経済産業省の有限責任事業組合制度に関する研究会(日本版LLP研究会)が、日本版LLP制度の骨格についての中間的なとりまとめを行い、その内容を「有限責任事業組合制度の創設の提案」として公表しました。経済産業省の同研究会のサイトで閲覧できます。

この中間とりまとめに関する感想をこちらにPDF形式で掲載しました。

(た)

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LLC・LLP理解のための参考資料

 報道によると、平成16年12月8日、法制審議会会社法(現代化関係)部会で「会社法制の現代化に関する要綱」 が決定されたとのことです。

 審議会の情報は、法務省サイトの「審議会情報」の「法制審議会会社法 (現代化関係)部会」の項でみることができますが、この記事を書いている時点では、まだ最新の情報に更新されていないようです。

 なお、日本版LLC(上記「要綱」で合同会社とされている会社)および日本版LLP(経済産業省の研究会で検討が進行中のもの。) の理解ために参考資料を作成しました。

 この参考資料は、「本家」サイト(太田浩税理士事務所)内の会社法制のページにアップロードしました。

 (た)

 

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税理士のページ

「本家」サイトにおける税理士のページはこちらです。

裁決・裁判例の紹介のほか、会社法制に関する情報やコメントを随時掲載しています。

本ブログでも「税理士」は、更新頻度が高いカテゴリになるでしょう。 

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